三百万の命

原作者 かめくん
登場キャラ数 男:3 女:0 無:0
ジャンル SF
セリフ数 126
目安時間
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提供元 音楽作品を制作している1次創作グループ
メディア  
舞台設定
西暦22XX年。
太陽系を覆いつくさんばかりに増えてしまった人類は、新しい移住先を必要としていた。
外宇宙への移住。『ニュー・フロンティア計画』
これを成功させるべく、各国から優秀な人材が集められ、
次々と太陽系の外へ旅立っていった。移住可能な惑星系を探し求めて――

サークル情報

登場人物 性別/声 セリフ数 その他
仲里 明
(なかざと あきら)
/ 50 22歳。日本人。名前の読みは『なかざと あきら』
外宇宙探査隊には去年配属されたばかりの新米。
決して裕福な家庭の生まれではなかったが、
必死に勉強して外宇宙探査隊に入った。
真面目な性格で、人類の命運を握る
『ニュー・フロンティア計画』を何としてでも
完遂せねばと言う信念に燃えている。
アンを副隊長として認めてはいるが、
人間性において彼を軽蔑している節がある。
アンドレイ・
リムスキー=
コルサコフ
/ 53 26歳。ロシア人。
周囲からは『アン』と呼ばれている。
明が所属する、第807外宇宙探査隊の副隊長。
長く綺麗な髪と整った顔立ちから、
女性と間違われる事がある。
大富豪の家庭に生まれ、何不自由なく育った。
美貌だけでなく才能にも恵まれ、
若干20歳にしてロシアの宇宙科学大学を
首席で卒業した経歴をもつ。金をちらつかせたり、
人を小馬鹿にした態度をとることがある為、
彼を嫌う人間も多い。
ジェームズ・
ジャクソン
/ 23 24歳。アメリカ人。周囲からはイニシャルを取って
『JJ』と呼ばれている。
第807外宇宙探査隊の中堅メンバー。
感情豊かで熱くなりやすい。明の良き先輩。
アンの下で任務につくことが多い。
言葉遣いが粗い一面も。
少しでも髪を伸ばすと女性っぽく見えてしまう顔立ち
を嫌って、いつも短めのヘアスタイルにしている。
001 アン 『二ヶ月前、第807外宇宙探査隊はとある恒星系にMクラスの惑星らしき反応を見つける。
これを調査する為、アンドレイ副隊長とジェームズ・ジャクソン(JJ)、仲里明の3人は探査艇に乗り込み、
母船『クロノス』から出発した。
あと少しで目標の惑星に到達すると言うところで、探査艇は突如開いた亜空間の入り口に飲み込まれてしまう。
通常空間に出た探査艇は、恒星系の反対側まで飛ばされていた。
最寄の惑星を利用した重力ターンで軌道を修正し、母船まで戻る事にした3人。
それは、全行程に丸一年を要する旅路だった』
002 ト書き 食堂の扉が開く
003 アン 「おはよう、アキラ」
004 仲里明 「おはようございます。副隊長」
005 アン 「昨日はよく眠れたかい?」
006 仲里明 「ええ。まあ・・・」
007 ト書き 返答しつつ、アンの向かいの席に腰を下ろす明
008 アン 「浮かない顔だね。ホロTVの修理ならまだ終わってないよ」
009 仲里明 「構いませんよ。収録されてる番組は大方見ましたから」
010 アン 「そうかい?JJは『貴重な娯楽が減った』って嘆いてたけどね」
011 仲里明 「あの人は相変わらずですね。今は明日の食料もどうなるか分からないのに・・・」
012 アン 「まあ、この船はもともと長期間航行するようには出来ていないからね。
二ヶ月もすればあちこちガタがくるさ」
013 仲里明 「もしフード・レプリケーターが止まりでもしたらと思うと、気が気じゃないですよ」
014 アン 「フード・レプリケーターではないけど、『クロノス』との通信なら昨晩から不通になっているよ」
015 仲里明 「不通!?通信アレイの故障ですか?」
016 ト書き 慌ててスプーンを落としそうになる明
017 アン 「いや、通信アレイに異常はみられなかった。多分、恒星の影に入ったからじゃないかな。一時的なものだよ」
018 仲里明 「一時的・・・ですか。いつ頃回復します?」
019 アン 「さあ?重力ターンを終えて軌道を修正してからだから、ざっと四週間後かな?」
020 仲里明 「四週間・・・」
021 アン 「そう気を落とさないで欲しいな。君の可愛い顔が台無しだ」
022 仲里明 「・・・それ、言う相手を間違ってますよ」
023 アン 「はは。JJに言うと怒るからね。少し髪が伸びたんじゃないかな?良かったら、私が切ってあげるよ」
024 仲里明 「結構です。少し伸ばそうと思ってますから」
025 ト書き ツンとした顔でアンの申し出を断る明
026 アン 「つれないね。こう言えば、他の女の子はみんな喜んで髪を切らせてくれたよ?」
027 仲里明 「他のって何ですか。僕は男です」
028 アン 「そうだね。まったく残念だよ。君が男だなんて・・・。
JJもそうだけど、君たち二人には庶民らしい愛くるしさがある。
女の子であったなら、さぞかしモテた事だろうね」
029 仲里明 「それを副隊長が言うんですか?副隊長だって」
030 アン 「綺麗だろう? 私だって自覚はあるよ。宇宙科大のミスコンで優勝した事だってある」
031 仲里明 「わざわざミスコンに出たんですね・・・」
032 アン 「もちろん。優勝できると思ったからね」
033 ト書き 涼しい顔でコーヒーカップを口元へ運ぶ
034 アン 「ところでアキラ。
もし『クロノス』との合流予定地点に到着しても、彼らがその場にいなかったらどうする?」
035 仲里明 「ありえません!僕たちを見捨てて行くなんて、隊長がそんな事するはずありませんよ!」
036 アン 「あくまで仮定の話だよ。しかし、可能性としてはゼロじゃない話だ何せ、突然通信が途絶えてしまったんだ。
隊長たちは我々の無事を知らない。
この先一ヶ月も通信が途絶えたままなら、さすがの隊長も私たちを諦めるかも知れないよ」
037 仲里明 「そんな・・・」
038 アン 「幸い、合流予定地点はあのMクラスの惑星の公転軌道上だ。
もし『クロノス』に見捨てられたら・・・そうだね。あの星を私たち3人の楽園にするかい?」
039 仲里明 「はは・・・良いですね。『ニュー・フロンティア計画』ならぬ、『ニュー・ユートピア計画』ですか。
男3人じゃ、一代限りの楽園ですけどね」
040 アン 「そうとも限らないよ?君は生物医学の発展を甘く見ているね」
041 仲里明 「どういう意味ですか?」
042 アン 「実は探査隊のメンバーが男女どちらかだけになった時に備えて、
同性同士でも子を生せるようにする薬が開発されているんだ。
それはこの船の医療キットにも備えられているんだよ・・・
遠く離れた宇宙でも、人類という種が潰えないようにする為にね」
043 仲里明 「・・・・・・副隊長の言いたい事は、よーく分かりました。その上で申し上げます。
僕が男の人と子供を作ることは『絶対に』ありえません」
044 アン 「そうかな?私は計画を遂行する為なら、それも『やむなし』だと考えているよ」
045 仲里明 「『やむなし』で済ませないでください!カタツムリじゃあるまいし!そんなの、倫理的にアウトですよ!」
046 アン 「君は考え方が硬いな。もう少し柔軟に考えた方が良いと思うよ」
047 ト書き 笑みを浮かべながらコーヒーカップに口をつけるアン
048 仲里明 「硬い柔らかいの問題じゃないですよ!それは越えてはいけない一線ってヤツです!
・・・もしかして副隊長、『そっち』の気があるんですか?」
049 アン 「まさか。私は女の子が大好きだよ?男と『する』なんて死んでも御免だね」
050 仲里明 「呆れましたね・・・自分だけは例外だとでも仰るつもりですか?」
051 アン 「違うよ。私だって例外ではないさ。
ただ、薬によって肉体的に女性になるならば、元が男だったとしても『抱ける』と言っているだけだよ」
052 仲里明 「だ、『抱ける』とか、生々しい言い方は止してください!」
053 アン 「可愛らしい反応だね。つくづく、君が男なのが残念でならないよ」
054 仲里明 「とにかく、副隊長が何と言おうと、たとえ大金を積まれたってお断りですから!ゼッタイにイ・ヤです!」
055 アン 「そうか大金か・・・私なら、君の言い値を出せると思うよ?」
056 仲里明 「ほーう、そうですか。言って置きますけど、カードとか小切手は受け付けてませんからね?
今この場で、現金で支払ってください!」
057 アン 「もちろんだよ」
058 ト書き 即答すると、自分の上着の胸ポケットを開けるアン。
中から札束を取り出すと、明の目の前のテーブルにドサッと置いた
059 アン 「米ドルで300万ある・・・これで足りるかな?」
060 JJ 「まったく、呆れて物も言えませんよ副隊長。
こんな外宇宙に来てまで現ナマなんか持ち歩いて、一体何の役に立つって言うんです?」
061 アン 「人を動かすには現金(キャッシュ)が一番だよ、JJ。
カードなんかじゃダメだ。それに、『金には人を救う力』がある・・・
きっとこの外宇宙でも、私を助けてくれるだろうさ」
062 ト書き 話しながらテーブルの札束を手に取ると、元の胸ポケットにしまうアン
063 JJ 「はあ、そういうもんですかねぇ・・・おいアキラ。いつまで札束に慌ててるんだ。しっかりしろ」
064 仲里明 「は、はい!先輩!」
065 JJ 「副隊長、重力ターンを予定している惑星の光学スキャンが終わりました・・・
ちょいとコイツを見てくださいよ」
066 アン 「ふむ・・・参ったな。まさかこれ程とは」
067 仲里明 「なんですか、これ・・・これが惑星なんですか?」
068 ト書き JJが見せた端末には、ドーナツのようなリング状の形をした天体が映し出されていた
069 JJ 「元々はかなり大きい質量の星だったんだろうな・・・自重で潰れて、こんなウマそうな形になったのさ」
070 仲里明 「こんな天体、近づくだけでも危険極まりないですよ!他に重力ターンに使えそうな天体を探しましょう!」
071 アン 「・・・ダメだ」
072 仲里明 「どうしてですか!?」
073 アン 「既に天体の重力圏内に入ってしまっている・・・
そもそも、大した推力も出せないこの船で帰艦するには、天体の重力を利用するしかなかった。
重力の流れに身を任せて漂流しているようなものだよ。いまさらコースを変える事は不可能に近い」
074 JJ 「同感ですね。幸い、適切な距離を保ちつつ安全に重力ターンする事は可能です。ただ、問題は」
075 アン 「時差か」
076 JJ 「はい。重力ターンをする間、少なくとも1時間は超重力下に晒されるわけですからね・・・
それだけで10年が経っちまいますよ」
077 仲里明 「そんな、10年だなんて・・・」
078 アン 「『ニュー・ユートピア計画』・・・いよいよ現実味を帯びてきたかな」
079 JJ 「おい、アキラ!どこへ行くんだ!」
080 仲里明 「僕は諦めませんよ!必ず、クロノスと合流する方法を見つけます!」
081 アン 「待て、アキラ」
082 仲里明 「止めないでください、副隊長!」
083 アン 「もう時間がない。このまま加速を続ければ、
2時間後には重力ターンを開始しなければならなくなる・・・配置につくんだ」
084 仲里明 「クロノスの皆とは、もう二度と会えなくなるかも知れないんですよ!?
それなのに、帰艦を諦めろって言うんですか!」
085 アン 「そうだ!!我々はクロノス帰艦を諦める!!」
086 仲里明 「・・・了解・・・仲里明、配置につきます」
087 アン 「よろしい・・・JJ、後は頼む」
088 JJ 「了解」
089 ト書き 二時間後、中央制御室にて
090 アン 「10分後に本船は重力ターンを開始する。各員、準備はいいか」
091 JJ 「こちら機関室、JJ。いつでもいけますよ」
092 ト書き 機関室のJJが通信で答える
093 仲里明 「・・・はい、問題ありません」
094 JJ 「どうした、アキラ。集中しろ。チャンスは一度きりだ。
失敗すれば俺たちは超重力の渦に飲まれて、あっという間にぺしゃんこだぞ」
095 仲里明 「分かってます・・・」
096 JJ 「それと、途中で何かあっても俺はここから離れられない・・・
今は隣にいる副隊長を信じて指示に従うんだ。いいな」
097 仲里明 「・・・了解」
098 アン 「第一次、姿勢制御開始!」
099 JJ 「姿勢制御スラスター起動・・・出力安定、異常なし」
100 仲里明 「コースが変わります。修正、2,09」
101 アン 「よし、第二次姿勢制御開始!」
102 JJ 「制御スラスター、出力変更!」
103 仲里明 「・・・コース再修正、0,14」
104 JJ 「予定通りです。あと5分で超重力圏に入ります。
アキラ、ドップラーに気をつけろ!センサーの修正を忘れるな!」
105 仲里明 「・・・」
106 JJ 「アキラ?どうした、聞こえないのか?」
107 仲里明 「・・・」
108 アン 「何の真似だ。アキラ」
109 ト書き アンに向かって拳銃をつき付ける明
110 仲里明 「すみません、副隊長・・・やっぱり僕は、クロノスを諦め切れません!」
111 アン 「私を撃って、どうするつもりだ?」
112 JJ 「!?やめろ!アキラ!!お前、今何してるのか分かってるのか!?」
113 ト書き 通信の向こうで状況を察したJJが止めに入る
114 仲里明 「自分でも再計算してみました。超重力圏に入る前であれば、まだ脱出は可能なはずです・・・
お願いです。僕の指示に従って、コースを変更してください!」
115 アン 「今ここで無理に重力圏から脱出しようとすれば、
その反動で恒星系の外側へ放り出されてしまうかも知れないぞ。
姿勢を崩せば、重力惑星の中心部へ突っ込む可能性だってある」
116 仲里明 「そんなの、やってみなくちゃ分かりませんよ!少なくとも、10年経つよりはマシです!」
117 JJ 「待てアキラ!冷静になれ!
クロノスに帰りたいのは副隊長だって、俺だって同じなんだ!お前だけじゃない!」
118 アン 「超重力圏まであと3分だ・・・どうしてもと言うのなら、私を撃て」
119 JJ 「やめるんだアキラ!!副隊長も、やめてください!!
このままじゃ3人とも死んじまいますよ!!」
120 アン 「もう時間はないぞ、アキラ」
121 仲里明 「・・・」
122 アン 「ためらうな」
123 仲里明 「・・・・・・っ!」
124 ト書き 中央制御室に響き渡る銃声
125 アン 「・・・うっ」
126 ト書き 胸に銃弾を受け、仰向けに倒れこむアン
127 JJ 「アキラぁあ!!馬鹿野郎!!副隊長!!無事ですか!!副隊長!!返事してくださいよ!!副隊長!!」
128 ト書き 突如、船内に警報がけたたましく鳴り響いた
129 JJ 「ま、まずい!コースが反れ始めてる!おい、アキラ!!聞こえるか!?
すぐにコースを戻せ!!このままじゃ重力惑星に吸い込まれるぞ!!」
130 仲里明 「い、今やってます!!コース修正、3,22!!スラスターを全開にしてください!!」
131 JJ 「もう既にやってる!!どんどん高度が下がってるぞ!!何とかならないのか!?」
132 仲里明 「そんな・・・僕の計算が間違ってたのか!?どうして・・・一体どうしたら・・・」
133 JJ

「チクショウ!!もうダメか・・・!」

134 ト書き 突然、警報が止む。モニターを見ると、みるみるコースが予定通りに修正されていく
135 JJ 「・・・ん?お、おい、やったなアキラ!コースが元に戻ったぞ!」
136 アン 「残念だったねJJ。コースを戻したのは私だよ」
137 JJ 「副隊長!?無事だったんですか!?」
138 アン 「ああ。まさに、金が私を救ってくれたよ・・・」
139 ト書き 感慨深げに、手にした札束を見つめるアン。それには鉛の弾丸が深くめり込んでいた
140 仲里明 「副隊長・・・すみません。僕は副隊長を・・・」
141 アン 「良いんだ。もう過ぎたことだよ・・・3人とも無事で良かった。そうだろう?」
142 ト書き 泣いている明に近づき、その髪に触れるアン
143 アン 「やはり、少し髪を切った方が良いと思うな・・・良かったら、私が切ってあげよう」
144 仲里明 「はい・・・お願いします」
145 アン 『その後、無事に重力ターンを終えた我々は、クロノスとの合流地点を目指した。
10年と言う歳月が過ぎた今でも、果たして彼らは待ち続けてくれているだろうか・・・・・・』
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