臆病な狩人

原作者 かめくん
登場キャラ数 男:2 女:2 無0
ジャンル シリアス・ミリタリー
セリフ数 176
目安時間 15分
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提供元 音楽作品を制作している1次創作グループ
メディア  
舞台設定
とある潜水艦に、世にも珍しい女性の艦長が着任した。
だが、この艦に限って言えばそれも珍しいことではない。
戦争末期、乗員不足に悩まされていた軍部は、
予備役扱いだった女性士官を試験的に艦艇乗員にすることにしたのだ。
それに伴い、この潜水艦の乗組員は一部を除いてほとんどが経験不足な女・子供である。
洋上の哨戒任務に赴いた新米艦長とその乗組員だったが、
発見した敵船団に少しでも護衛艦艇の気配があれば決して襲撃する事はなかった。
新米艦長の臆病な戦術に、乗組員たちも苛立ち始めていた頃、
悪天候の中ついに護衛艦なしの敵輸送船団を発見する。
早速雷撃位置に着き、雷撃の機会を伺う彼女たちだった。
登場人物 性別/声 セリフ数 その他
艦長
(かんちょう)
53 新米艦長。着任したてで、実戦経験に乏しい。
冷静だが、慎重な戦術を取ることが多く、
艦内では臆病者なのではないかと言う噂も立っている。
副長
(ふくちょう)
/ 62 新米ではないが、経験豊富と言う程でもない。
艦長を頼りない上官として見ており、
自分がしっかりせねばと意気込んでいる。
聴音士
(ちょうおんし)
/ 37 ソナー担当。
最近やっと慣れて来て、誤報告もなくなってきた。
この中では最年少となる。
機関長
(きかんちょう)
/ 24 テランの老兵で、艦を娘や孫のように可愛がっている。
昔は荒くれ者だったようだ。
(台詞少ないので聴音士と兼役でもいいかも)

サークル情報

001 副長 「潜望鏡深度まで到達!」
002 艦長 「機関停止、潜望鏡上げ」
003 機関長 「機関停止!」
004 副長 「潜望鏡、上げます!」
005 艦長 「ふむ・・・敵船団は確認しましたが、やはり視界が悪いですね。付近に駆逐艦がいるかどうかは不明です」
006 副長 「聴音、どうか?」
007 聴音士 「・・・・・・嵐の影響で騒音が酷く正確には判別できませんが、
少なくとも敵船団内に駆逐艦らしきタービン音は確認できません!」
008 副長 「如何いたします、艦長」
009 艦長 「・・・そうですね。まだ、付近に敵艦がいないとも限りません。
ここは天候の回復を待ってから再度追跡し・・・」
010 副長 「お言葉ですが、出撃後いまだに敵艦襲撃の機会さえ与えられていない現状、
不満を募らせる者も増えています。
燃料・食料の残量を考えますと、この機会を逃せば『次』はありません・・・
それにこの悪天候ならば、敵の追跡を振り切るのも容易かと」
011 艦長 「・・・分かりました。敵輸送船の数は五、先頭から二番目を狙います。
ただし、雷撃は一度だけ。念の為、通常魚雷四本を使用します」
012 副長 「了解!一から四番、魚雷発射準備!!発射管開け!!」
013 機関長 「輸送船相手に魚雷四本も使うとは、大盤振る舞いですなぁ」
014 艦長 「乗員の練度不足に加え、この悪天候ですから・・・その内の何本が当たってくれるか分かりません」
015 副長 「諸元(しょげん)入力完了!!魚雷、発射準備よし!!」
016 艦長 「了解・・・・・・一、四番発射!続いて二、三番発射!」
017 副長 「発射完了!!」
018 艦長 「・・・10・・・15・・・20・・・」
019 副長 「聴音!」
020 聴音士 「魚雷、走ってます!敵船団、速度変わらず!」
021 艦長 「・・・35・・・40・・・45・・・そろそろですね」
022 聴音士 「・・・水中爆発音!!数、一(かず、ひと)!!」
023 副長 「よし!」
024 聴音士 「船体破壊音を確認!!轟沈です!!」
025 艦長 「ふぅ・・・深々度潜行、直ちにこの海域より離脱します」
026 副長 「しんーしんどーせんこー!!急げぇー!!」
027 副長 「艦長、先ほどの雷撃ですが・・・この距離から低速の目標相手に命中が四本に一本では、
さすがに問題があります」
028 艦長 「悪天候の中、よくやってくれたとは思いますが・・・
やはり練度不足は否めませんか。分かりました、その件は副長に任せます」
029 副長 「では早速、水雷長と協議し訓練メニューの見直しにかかります」
030 艦長 「お願いします」
031 聴音士 「ん・・・・・・感三(かんさん)!!
百二十度(ひゃくふたじゅうど)、音源補足!!数、二(かず、ふた)!!」
032 副長 「感三?敵船団の生き残りか?速力はかれ!」
033 聴音士 「・・・・・・高速です!!はかれません、二十(ふたじゅう)以上!!」
034 副長 「高速!?続けろ!!」
035 聴音士 「百二十五度(ひゃくふたじゅうごど)、近づきます!!敵艦確実!!」
036 副長 「くっ、やはり駆逐艦がいたか!」
037 艦長 「深度二百(しんどふたひゃく)!!爆雷防御!!」
038 副長 「ばくらいぼーぎょー!!」
039 聴音士 「感三強!!敵艦、さらに近づく!!あ、いえ!敵は二手に分かれました!!
一つは艦首七十度の方へ離れていきます!」
040 副長 「もう一つは!?」
041 聴音士 「・・・・・・まっすぐこちらへ向かってきます!!九十五度!!感四!!」
042 副長 「気づかれたか!」
043 艦長 「面舵(おもかじ)いっぱい、水中全速!!機関長!!」
044 機関長 「両舷モーター全速!!」
045 副長 「おもーかーじ!!」
046 聴音士 「右舷九十五度の音源上がった!!感四・・・感五!!」
047 副長 「逃げ切れないか・・・!」
048 艦長 「急速潜行!!衝撃に備えて!!」
049 聴音士 「敵艦、直上通過!!爆雷!!」
050 副長 「ばくらーい!!」
051 ト書き 轟音と共に船体が激しく揺れる
052 艦長 「くっ・・・!」
053 聴音士 「うわっ!?」
054 機関長 「敵さんも派手にやりおるわい!」
055 副長 「各部、損害状況知らせ!!」
056 機関長 「機関室に浸水!!右舷モーター停止!!」
057 艦長 「修理を急いで!!機関長、修理の指揮を執って下さい!」
058 機関長 「了解!!手の空いてるモンはわしに続け!!」
059 艦長 「敵は!?」
060 聴音士 「爆雷投下後、そのままの進路で本艦より遠ざかりつつあります!感四!!」
061 艦長 「もう一つは?」
062 聴音士 「・・・・・・こちらへ引き返してきます!!二百九十度(ふたひゃくきゅうじゅうど)!!感四!!」
063 艦長 「敵の爆雷音に紛れてやり過ごします!進路そのまま!!」
064 聴音士 「あ!先程、爆雷を投下した敵も引き返してきます!!百七十五度!!感四!!」
065 副長 「いかん!このままでは挟み撃ちだ!!」
066 艦長 「メインタンク注水、深度二百五十(しんどふたひゃくごじゅう)!!急速潜行!!」
067 副長 「二百五十!?この損傷でその深度まで潜るのは危険です!!」
068 艦長 「全速で航行できない今、下へ潜るのが一番の回避方法です」
069 聴音士 「敵艦、爆雷を投下!!投下音多数!!数が多くて数え切れません!!」
070 副長 「ヘッジホッグか!?」
071 艦長 「問題ありません!
ヘッジホッグは設定深度が浅い為、深く潜れば上で弾けます!このまま潜行を続けてください!」
072 機関長 「なんじゃ!?一体どこまで潜る気じゃ!
まったく、艦長も無茶をさせおるわい・・・頼むから、もってくれよ!」
073 副長 「深度、二百四十・・・・・・二百五十!!」
074 艦長 「機関停止、深度二百五十を維持!修理の状況は?」
075 副長 「機関室の浸水は止まった様です。現在、モーターの修理中。今の所、船体にも異常は見られません」
076 艦長 「敵の様子は?」
077 聴音士 「こちらの位置を見失っている様ですが、ずっと付近を警戒中ですね・・・
感三強から感四。爆雷は止んでます」
078 副長 「簡単には諦めてくれないか・・・どうします、艦長?」
079 艦長 「逃げるにしても、一矢報いるにしても、モーターを全力で回せる状態でなければなりません。
このまま修理が完了するまで身を潜めましょう」
080 副長 「とは言え、この深々度です・・・あまり長居するのも禁物かと」
081 聴音士 「さっきから船体がミシミシいってますからね・・・いつ圧壊するか、気が気じゃないですよ」
082 機関長 「こちら機関室!副長、良い報告と悪い報告があるぞ」
083 副長 「私だ。良い報告から聞こう」
084 機関長 「右舷モーターの修理が終わった。これでいつでもブン回せるぞ!」
085 副長 「ご苦労・・・して、悪い報告というのは?」
086 機関長 「それなんじゃが・・・実はさっきの損傷でバッテリーが漏電しとってのぅ。電池残量があまりないんじゃ」
087 副長 「そうか・・・了解した。機関長はそのままこちらへ戻ってきてくれ。ご苦労だった」
088 艦長 「バッテリーの残量を考えると、このまま深々度潜行を続けて当海域を脱出するのは困難ですね・・・」
089 副長 「しかし、浮上航行を織り交ぜつつ逃げようにも、一度浮上すれば敵駆逐艦に捕捉されてしまいます。
幸い、今は嵐の影響で視界が悪くなっていますが・・・」
090 艦長 「それも、いつまで続いてくれるか分からない・・・
ここはやはり、敵駆逐艦の足を止めてから逃げる他ありませんね」
091 副長 「しかし、練度の低い我が方の雷撃では、駆逐艦相手に当てられるかどうか・・・!」
092 艦長 「当てられないなら、確実に当たる距離まで近づけば良い・・・そうでしょう?」
093 副長 「正気ですか!?駆逐艦相手に潜水艦で肉薄するなど、自殺行為です!!」
094 艦長 「聴音、敵の位置関係は把握できますか?」
095 聴音士 「まだ海が荒れていて聞き取りづらいですが、大体の方角と距離は把握できています!」
096 艦長 「結構です。深度そのまま。取り舵いっぱい、艦を敵艦の予測進路上につけて下さい」
097 副長 「艦長!!」
098 艦長 「副長、これが私の戦い方です。心配要りませんよ。
臆病者は臆病者なりに、ちゃんと戦い方を身につけていますから。伊達に海軍少佐はやってません」
099 副長 「艦長・・・」
100 機関長 「ほれ、どうした副長。早く復唱せんか!」
101 副長 「・・・しんどーそのままー!!とーりかーじ!!」
102 機関長 「水中微速、モーター異常なし」
103 艦長 「すべての発射管に音響魚雷を装填、いつでも撃てる様にしておいて下さい」
104 副長 「了解!」
105 艦長 「これより、標的の敵艦を甲、もう一方を乙と呼称します。
聴音、敵二隻の動きは逐一報告するように。あなたの耳が頼りです」
106 聴音士 「はい!任せて下さい!」
107 副長 「敵艦予測進路上に到達!」
108 艦長 「機関停止、敵の位置を報告して下さい」
109 聴音士 「敵艦甲、本艦の真後ろ!そのまま直進してきます!感三強!」
110 艦長 「乙は?」
111 聴音士 「本艦左舷前方、二十度(ふたじゅうど)を西へ航行中!感三!」
112 艦長 「分かりました。このまま雷撃の機会を伺います」
113 聴音士 「敵艦甲、進路・速度変わらず!さらに近づきます!感四!」
114 機関長 「気付かれとらんことを祈るしかないのぅ・・・まったく心臓に堪えるわい」
115 聴音士 「感五!敵艦、直上を通過!」
116 副長 「爆雷はどうか?」
117 聴音士 「・・・・・・着水音なし!まだ気付かれてはいないようです!」
118 艦長 「了解。仕掛けます・・・各部報告!」
119 副長 「魚雷装填よし!いつでもいけます!」
120 機関長 「モーター室異常なし!
全力回転に支障はありませんが、電池残量がありません。全速航行は10分が限度ですぞ!」
121 艦長 「問題ありません。5分あれば十分です・・・それよりも、
いつでも機関停止・反転が出来るように準備をしておいて下さい」
122 機関長 「了解!」
123 艦長 「モーター全速、上げ舵最大、雷撃可能深度まで急速浮上!魚雷戦用意!!」
124 機関長 「モーター全速、上げ舵最大!!」
125 副長 「総員、何かにつかまれ!!メーンターンブロー、きゅうそーく浮上ー!!」
126 艦長 「このまま敵の背後を突きます!一、二番魚雷発射用意!!」
127 副長 「了解!発射管開け!!」
128 機関長 「雷撃深度まで到達!!」
129 聴音士 「敵艦甲、速度上げました!!左へ転進していきます!!」
130 副長 「さすがに気付いたか!」
131 艦長 「逃がしません!一、二番魚雷発射!!」
132 副長 「てぇっ!!」
133 聴音士 「敵艦乙も速度を上げました!!こちらへ向かってきます!!右舷十五度!!感三強!!」
134 艦長 「このまま敵艦甲の後ろへつけてください!取り舵、最大戦速!!」
135 副長 「とーりかーじ!!最大せんそーく!!」
136 聴音士 「やりました!!スクリュー破砕音!!敵艦甲、機関停止!!」
137 艦長 「停止した敵艦の下へもぐりこみます!急速潜行!!」
138 聴音士 「敵艦甲、爆雷を投下!!着水音多数!!」
139 副長 「ばくらーい!!」
140 艦長 「おそらく当たりません!このまま肉薄してください!」
141 機関長 「どうやら、敵さんも泡をくっとるようですな!設定深度もめちゃくちゃで、かすりもせんわい!」
142 聴音士 「敵艦甲の真下を通過!!敵艦乙、正面に捕らえました!!右舷五度!!感四!!」
143 副長 「雷撃が間に合いません!!急速回避を!!」
144 艦長 「いえ、このままいきます!上げ舵最大!急速浮上!雷撃深度へ!!」
145 副長 「なっ!?」
146 艦長 「すれ違ったら左回頭、敵の背後から魚雷を叩き込みます!
魚雷、三、四番発射準備!!総員、衝撃に備えてください!」
147 聴音士 「敵艦乙、直上通過!!爆雷!!」
148 副長 「ばくらーい!!こんなの、無茶苦茶だ・・・!」
149 機関長 「はっはっは!なんと大胆な!面白くなってきたわい!」
150 聴音士 「敵艦、反転を開始!!」
151 副長 「くっ!弾薬庫に浸水発生!!艦長!!」
152 艦長 「機関反転、面舵いっぱい!!急速回頭!!」
153 機関長 「機関反転!!」
154 副長 「おもーかーじ!!」
155 聴音士 「ドンピシャです!!敵艦の背後を取りました!!」
156 艦長 「魚雷発射、今!!」
157 副長 「三、四番、てぇーッ!!」
158 聴音士 「魚雷、走ってます!!敵艦、回避運動に入りました!!」
159 機関長 「今さら遅いわい・・・」
160 聴音士 「直撃です!!敵艦、速度落としました!!」
161 副長 「やった!」
162 聴音士 「その後方で船体破壊音!!敵艦甲が沈みます!」
163 機関長 「やれやれ、これでやっと敵さんも諦めてくれるわい」
164 艦長 「ふぅ・・・この機に乗じ、当海域を脱出します。
取り舵いっぱい、水中微速。深々度潜行、戦闘用具収め」
165 副長 「了解!しんーしんどーせんこー!!とーりかーじ!!戦闘用具収め!!」
166 機関長 「モーター、両舷微速!」
167 副長 「お疲れ様です、艦長。その・・・お見事でした」
168 艦長 「ありがとうございます。聴音も水雷科もよくやってくれましたし、皆の努力のおかげです」
169 副長 「そうですな。聴音も、ご苦労だった」
170 聴音士 「ありがとうございます!」
171 機関長 「いやぁ、今日も生き残った!
こういう日には、ぱぁーっとやっておきたいモンじゃ!艦長も一杯、どうですかな?」
172 副長 「機関長!またっく、いつもいつも・・・」
173 艦長 「たまには良いですね。頂きましょう」
174 副長 「か、艦長!」
175 艦長 「副長もどうですか?たまには」
176 副長 「まぁ・・・たまには・・・」
177 艦長 『バッテリー残量が尽きるまで潜行を続けたあと浮上し、我々は修理補給の為に母港まで帰投した。
水平線上に母港の島影が見える頃、やっと私の肩の荷が下りたような気がした。
今回は少し無理をしすぎたようだ。
陸に上がったらまず何をするか、その話題で盛り上がる乗組員たち。
一人も欠けることなく、無事に戻ってこれた事に、喜ばない者はいない。
私は思った。臆病者でも良いじゃないか、と』
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