人生の全て

原作者 きなもち
登場キャラ数 男:2女:2無0
ジャンル シリアス
セリフ数 216
目安時間
利用規約 配布元とURL書いてってことです
提供元 音楽作品を制作している1次創作グループ
メディア  
登場人物 性別/声 セリフ数 その他
(はは)
17  
(ちち)
10  
(わたし)
104  
(おとこ)
85  

サークル情報

001 「あんたね!自殺なんてバカなこと何度繰り返したら気が済むの!」
002 「お前がそんなくだらないことをする度、こっちに迷惑がかかるんだぞ。わかっているのか?」
003 「・・・」
004 「ほら!返事ぐらいしなさいよ!人様に迷惑かけたくせに、そんな態度が許されると思ってるの!?」
005 「・・・病院で大声出さないでよ」
006 「なっ・・・なによその態度は!?
あんたねぇ!反省ってもんを知らないの!?一言ぐらい謝ったらどうなの!?」
007 「ごめんなさい」
008 「どうせ口ばっかり・・・謝っておけば済むと思ってんでしょ!
あんたを誰が今まで育ててあげたか分かってる!?」
009 「・・・お父さんとお母さん」
010 「そうでしょ!?なのにあんたはその恩を仇で返すようなマネをしてるのよ!?分かってる!?」
011 「・・・はい」
012 「あんたね!返事するだけでどうせまた同じことするつもりなんでしょ!いい加減に」
013 「母さんもういい。どうせ言ってもムダだ。帰ろう」
014 「・・・はぁ、そうね。じゃあもう帰るけど、あんた窓から飛び降りたりするんじゃないわよ!?いい!?」
015 「母さん、いいから。行くぞ」
016 「・・・はぁ」
017 「・・・・・・どうせ・・・なんにも分かってないくせに。なによ、頭ごなしに叱るばっかり。
今まで育ててきただのなんだの・・・あたしの気持ちなんて全然分かってない!
私のことなんて何にも分かってない!私のことなんて分かろうともしない!あんなの親なんかじゃない!」
018 「そうだねぇ、あんなひどい人が親だなんて可哀想だねぇ」
019 「え・・・だ、誰!?」
020 「おっと、驚かせてすまないね」
021 「あ、いえ・・・」
022 「勝手に病室にお邪魔して申し訳ない。ただ怪しいものじゃないから安心して」
023 「いや、怪しいものじゃないって言われても・・・」
024 「そうだねぇ。言われたからって素直に信じることはできないよね。
見知らぬ人に急に話しかけられたら身構えるのは当然のことだからね」
025 「そ、そりゃあ・・・」
026 「まぁ信じてくれなくてもいい。ただ少しおじさんの話を聞いてくれないかい?」
027 「は、話?」
028 「そうだな・・・じゃあおじさんは入り口の前から動かずに君と会話すると約束する。
少しでも近づいたらそこにあるナースコールを鳴らせばいい。それでどうだい?」
029 「えっと・・・は、はい。それで構いません」
030 「ありがとう。じゃあまず始めにいくつか質問してもよろしいかな?」
031 「はい、いいですよ」
032 「えーっとねぇ、君は霊の存在は信じているかい?」
033 「れ、霊ですか?」
034 「うむ」
035 「いえ、信じていません」
036 「それはなぜ?」
037 「え、なぜって・・・だってありえないじゃないですか」
038 「ありえない・・・んー、じゃあ神様とかそういう存在は信じているかい?」
039 「し、信じていません」
040 「それはなぜだい?」
041 「だってもし本当に神が存在するなら不幸になる人がいるのはおかしいじゃないですか」
042 「ふむ、なるほどねぇ」
043 「・・・あの」
044 「ん?なんだい?」
045 「なんでそんなこと聞くんですか?」
046 「ちょっと話の本題に関わることだから先に聞いておいただけだよ」
047 「・・・もしかして宗教勧誘かなにかですか?」
048 「え?いやいや、そんなけったいな話じゃあないよ。大丈夫、安心しなさい」
049 「じゃあなんで神とか霊とかそんな質問ばっかり・・・」
050 「まぁまぁ、本題はここからだから焦りなさんな」
051 「はぁ・・・」
052 「じゃ、いいかい?今までの質問を踏まえて本題に入ろう。
・・・これから話すのは架空で非現実的なもしもの話だ。想像を膨らませて聞いておくれ。いいかい?」
053 「はい、わかりました・・・」
054 「もしも誰にも迷惑をかけずに楽に死ねる方法があったら君はどうする?」
055 「え・・・」
056 「それも絶対に失敗なんてしない確実に死ねる方法だ。そんな方法があったら君はどうしたい?」
057 「・・・なんなんですか?」
058 「ん?」
059 「自殺しようとして病院に運ばれた私にそんな話をするなんて、偶然じゃないですよね?」
060 「はは、まぁそうですね。お嬢さんが自殺をしようとして失敗した。
しかし今でも死にたがっている。だから私はこうしてあなたの前に訪れました」
061 「・・・出てってください」
062 「ちょっと待ってくださいよ。まだ質問の答えを聞いて」
063 「出てってください!出て行かないとナースコールのボタンを押しますよ!」
064 「・・・ええ、構いませんよ」
065 「構いませんって・・・え、ちょっと!やめて!近寄らないで!いやぁ!
・・・押した!押したわよ!私に変なことしたらすぐに看護婦さんがきて」
066 「病院で大きな声を出さないでください」
067 「ん!・・・いや!触んないで!誰か!早く誰かきてえええ!」
068 「そんなに叫ばなくても看護婦さんはもうすぐ来るよ」
069 「は・・・え!?な、なに言ってんのあんた・・・!?」
070 「ほら、来ましたよ」
071 「か、看護婦さん!助けて!助けてってば!ねぇ!看護婦さん!
看護・・・な、なんで?なんで無視するの!?ちょっと!出て行かないでよ!ねえってば!」
072 「気がつかないのかい?」
073 「・・・な、なにによ?」
074 「無視されてるわけじゃあない。ただ看護婦さんには気がつくことができないんだ」
075 「気がつくことができない・・・?」
076 「なにせ私がそうしたからね」
077 「そうした?気がつくことができないようにしたってどういう」
078 「そんなことよりも質問に答えてくれるかな?」
079 「質問・・・?」
080 「もしも誰にも迷惑をかけずに楽に、
それも絶対に失敗なんてしない確実に死ねる方法があると言われたら・・・君はどうしたい?」
081 「・・・・・・そ、その・・・」
082 「・・・なんだね?はっきり答えてごらん」
083 「その方法を使って死にたい・・・です」
084 「ふむ、なるほどねぇ」
085 「・・・それで」
086 「ん?」
087 「その方法を使って私を殺すってことですか」
088 「は?」
089 「私を殺す気なんでしょ!殺したいんでしょ!?
だから病室に来て妙な方法でみんなに気がつかれないようにした!そうなんでしょ!?」
090 「ちなみに妙な方法とは?」
091 「そ、それはわかんないけど・・・」
092 「君は必死で叫んでいた。それも目の前で。なのに気がつかれなかった。
それがなんらかの方法というのはあまりに現実的ではない。そう思わないかね?」
093 「それは・・・そう、ですね」
094 「それと、君を殺して私に何のメリットがあるんだい?」
095 「え、えっと・・・」
096 「思いつかないだろう?」
097 「じゃ、じゃああなたは一体何者で、一体何が目的なんですか!」
098 「私は死神だ」
099 「え・・・死、神?」
100 「そう、そして君と契約をしにきた」
101 「ちょ、ちょっと待ってください!死神だなんてそんな話信じられるわけが・・・」
102 「じゃあさっきの看護婦のことはどう説明するつもりだい?」
103 「う・・・」
104 「まぁ信じなくてもいい」
105 「・・・契約って、一体何の?」
106 「おや?興味が出てきたのかい?」
107 「い、いいから聞かせないさいよ!」
108 「・・・君はまだ、死にたいんだね?」
109 「・・・はい」
110 「誰にも迷惑かけず確実に楽に死ねる方法で君を死なせてあげよう」
111 「ほ、本当にできるんですか・・・!?」
112 「できるとも、死神だからね。ただ代わりに君の生をもらう」
113 「生?」
114 「つまりは君の命、というより人生だ」
115 「残りの寿命ってことですか」
116 「いや、君の人生をもらう」
117 「じ、人生?」
118 「少し語弊はあるが、分かりやすく言い換えるなら全ての寿命・・・かな」
119 「ど、どういうことですか?」
120 「君の生まれてから死ぬまでの一生を全てもらうんだ」
121 「えっと・・・私が消滅するってことですか?」
122 「いや、そうじゃない。君はちゃんと死ぬ」
123 「え、じゃあどういう・・・いえ、よくわかんないけど
とりあえず私は誰にも迷惑かけず確実に、かつ楽に死ねるんですね?」
124 「契約を結んだ場合はね」
125 「・・・契約するにはどうしたらいいんですか?」
126 「契約を結ぶのかい?」
127 「これ以上生きてたって仕方ないです。だから早く死なせてください」
128 「本当にいいのかい?」
129 「構いません」
130 「代わりに君の人生を」
131 「いいですから早く!」
132 「・・・分かりました。ではここに名前を書いて、拇印を押してください」
133

「えっと・・・・・・これでいいんですか?」

134 「ふむ、契約完了。ではしばらく待っていてくれたまえ」
135 「あ、はい・・・・・・・・・あれ?私、いま・・・」
136 「気がついたかい?」
137 「あの、私どうなったんですか?」
138 「契約直後、君の体から魂を抜いたんだ。つまり今の君は霊体というわけだ」
139 「霊体・・・私はいま幽霊ってことですか?」
140 「そうだね。
それでだね通常、魂を体から抜くと生体から分離をした反動で数日は眠った状態になってしまうんだ」
141 「え、じゃあ今は契約してから数日経ってるってことですか?」
142 「あれから3日だ」
143 「3日も?そ、そうなんだ。で、私はこれからどうすればいいんですか?」
144 「何もする必要はないよ」
145 「え、でも・・・」
146 「目が覚めた後は俗に言うあの世という場所に向かう。そこまでやって初めて取引が成立するわけだ」
147 「じゃあ早く連れて行ってくださいよ」
148 「いや・・・それについては数時間待ってもらわないとならないんだ」
149 「数時間?どうしてですか?」
150 「霊体の目が覚めて初めてあの世へ連れて行く手続きができる。
それに時間がかかってしまうから申し訳ないんだが・・・」
151 「じゃあ待ってる間はどうしたらいいんですか?」
152 「私は君のところに再び訪れる。
だからここでただ待つのもいいし、どこか好きなところを見物に行っても構わない」
153 「好きなところに勝手に行っていいんですか?」
154 「ああ」
155 「えっとじゃあ・・・いまって何時ですか?」
156 「えーっと、午前7時38分」
157 「ちょうど学校が始まる時間か・・・ちょっと見に行ってみようかな。
ありがとうございます!行ってきます!」
158 「それじゃあ、私も手続きに行かなければ・・・」
159 「・・・お、ちょうどホームルームが始まるところかな。
・・・やっぱりみんなには見えてないんだ。
そりゃそうか・・・あれ?しーちゃん元気ないな。どうしたんだろ?
・・・泣いてる?どうして・・・そういえばしーちゃん、私が前に入院した時お見舞いに
来てくれたことあったっけ。
でもだからって・・・そうだ、私は3日前に死んだわけだからお父さんとお母さんも
私が死んだことは当然知ってるんだよね。
いまごろどうしてるんだろ・・・家に行ってみようかな」
160 「・・・・・・あ、お母さんだ。部屋の隅にうずくまってどうしたんだろ」
161 「・・・・・・・・・ぐす・・・なんで・・・」
162 「え?」
163 「なんで死んじゃったのよ・・・バカ娘・・・」
164 「・・・母さん」
165 「あんなに死ぬなって・・・バカなことはやめろって言ったのに・・・なんで!なんで!!」
166 「言っても分からなかったのはあいつじゃないか。母さんに責任は」
167 「私がもっとあの子のことを見てあげるべきだったのよ!
気にかけてあげるべきだったのよ!私が・・・私たちが・・・」
168 「・・・そうだな。本当に・・・そうだな。ごめんな・・・ダメな親で本当に・・・・・・」
169 「お父さん・・・お母さん・・・・・・」
170 「手続きが終わったよ、お嬢さん」
171 「あ、死神さん!」
172 「これから君をあの世に連れて行く」
173 「あ、あの!それ、取り消すことはできませんか!?」
174 「取り消す・・・というのは?」
175 「その、私を・・・生き返らせてください!」
176 「生き返らす?ここまできて?」
177 「何でもします!だからお願いします!」
178 「ふーむ・・・」
179 「無理・・・というかもしかして不可能ですか?」
180 「いや・・・生き返らすこと自体は可能だ」
181 「じゃあ!」
182 「しかし契約は一度結ばれてしまっている」
183 「そ、そこをなんとか!」
184 「だから、生き返らせはできても君の人生は頂いていくことになる」
185 「え?それはどういうことですか?」
186 「生き返らせてもいいが契約通り君の人生を頂く」
187 「え、えっと・・・生き返ることはできるんですか?」
188 「ああ、可能だ」
189 「だったら、お願いします!」
190 「しかし君の人生は」
191 「構いませんから生き返らせてください!お願いします!」
192 「・・・本当にいいのかい?」
193 「はい!」
194 「・・・そうか。わかった、じゃあ生き返らせるからしばらく待っててくれ」
195 「・・・・・・・・・んっ・・・ん?あれ?ここは・・・学校の帰り道?
え?いままでの・・・夢?でも・・・まぁいいや、とりあえず家に帰ろ」
196 「ただいまー」
197 「おか・・・え?ど、どちら様ですか?」
198 「はあ?何言ってんのお母さん私だよ。私」
199 「あなたのことなんて知りませんけど・・・」
200 「だから何言ってんの!?私だよ!この家の娘であなたの娘!わかるでしょ!」
201 「う、うちに子供はいません!出て行ってください!早く!」
202 「え、ちょっとなに言って」
203 「さもないと警察呼ぶわよ!」
204 「ちょちょちょ、待ってよ!だから」
205 「お父さん!ちょっと!玄関に変な人が!」
206 「あ、お父さん!」
207 「ぁあ!?なんだあんた!新手の詐欺か!?それとも強盗かなんかか!?」
208 「お父さんまで!?だから私だってば!娘の」
209 「うちに子供はいない!なんなんださっきから!・・・もういい!母さん、早く警察に電話しなさい」
210 「そんな・・・なんで・・・」
211 「警察がきたらすぐにしょっぴいてもらうからな。ほれ!こっち来い!」
212 「や、やめて!」
213 「おい待て!逃げるな小娘!」
214 「・・・・・・はぁ、はぁ、もう大丈夫かな・・・
でもなんで?なんでわかってくれないの?子供はいないってそんな・・・
あ、あれは!しーちゃん!おーい!しーちゃーん!
ちょっとしーちゃん!話を・・・え、ちょっと!しーちゃん!?しーちゃんてば!
ちょっと・・・今しーちゃん、逃げるみたい急に走り出して・・・
まるで知らない人に突然追いかけられたみたいに・・・・・・
知らない人?え?知らない人・・・って」
215 「君の生まれてから死ぬまでの一生を全てもらうんだ」
216 「・・・あぁそっか・・・そういうことか。私・・・・・・死んだんだ」
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