消防士になりたい

原作者 きなもち
登場キャラ数 男:2女:0無0
ジャンル コメディ
セリフ数 140
目安時間
利用規約 配布元とURL書いてってことです
提供元 音楽作品を制作している1次創作グループ
メディア  
登場人物 性別/声 セリフ数 その他
ひでお
70 消防士になりたい青少年
ささお
70 消防士になりたいわけではない青少年

サークル情報

001 ひでお 「お前さ、将来の夢とかある?」
002 ささお 「え?どうしたんだよ急に」
003 ひでお 「いや、ちょっとお前に相談があってさ」
004 ささお 「相談?」
005 ひでお 「ああ」
006 ささお 「将来の夢で相談って・・・俺生涯バンドマンで食っていきたいとか思わないぞ」
007 ひでお 「いやいや、『俺とバンドマン組まないか?』とかそういうお誘いじゃなくて」
008 ささお 「バンドマンは組むものじゃないけどな」
009 ひでお 「実は俺さ、最近までずっと消防士になりたいと思ってたんだよね」
010 ささお 「消防士に?」
011 ひでお 「そう。小さいころからの憧れでさ」
012 ささお 「へー、そうなんだ」
013 ひでお 「でも先日、ガスの元栓を素早く締める練習だけしてても消防士になれないことを知っちゃってさ」
014 ささお 「待て待て待て。なに?ガスの元栓を素早く締める練習って」
015 ひでお 「そうなんだよ」
016 ささお 「そうなんだよじゃなくて」
017 ひでお 「俺は一心不乱に頑張ってきたんだけど、どうやらそれだけじゃ消防士になるには足りないらしいんだよね」
018 ささお 「そりゃそうだろ!消防士は命がけの職業だから!ガスの元栓素早く締めれてもなれるわけないって!」
019 ひでお 「なれるわけないのか」
020 ささお 「当たり前だろ!」
021 ひでお 「それが世間では当たり前なのかもしれないけど、俺は最近それを知ったから仕方ない」
022 ささお 「まあ知らなかったならな。仕方ないかもしれないな。
それで相談ってのは?俺には消防士のツテとか一切ないけど」
023 ひでお 「いや、そういう期待をしてるわけじゃないんだけど。
そのー、自分がさ?消防士にはなれないって分かったとしても、
憧れの気持ちっていうか、なりたいっていう気持ちがすぐに収まるわけじゃないんだよ」
024 ささお 「まあな。そうだわな」
025 ひでお 「だから、せめて俺も消防士の気分を味わいたいなって」
026 ささお 「・・・なんて?」
027 ひでお 「だからその、気分っていうか、自分が消防士であるかのような雰囲気だけでも味わいたいから、
ちょっと協力してくれない?」
028 ささお 「・・・え?なに?
自分が消防士であるかのような雰囲気を味わいたいから協力してって、一体全体どういうこと?」
029 ひでお 「だから、そうだな・・・お前は『自宅に帰ってきたら家が火事になっている人』をやってくれ。
で、俺が消防士になって、お前を全力で助けるから」
030 ささお 「・・・なにそれ!?
え、つまり、今から二人で漫才師みたいに、架空の火災現場が目の前にある感じにするってこと!?」
031 ひでお 「ああ、そうそうそう。要はそういうこと」
032 ささお 「ええー!いや、まさか漫才師以外でそんな頼み事するやついると思わなかったわ!」
033 ひでお 「俺もまさかこんなお願いすることになるとは、思ってなかったよ」
034 ささお 「まぁお前は最近までガスの元栓ひねってれば消防士になれると思ってたからな」
035 ひでお 「とにかく頼むよそこのキミ!」
036 ささお 「やだよ!恥ずかしいじゃん!」
037 ひでお 「お願いだよそこのキミ!」
038 ささお 「嫌だって!やりたくないよ!」
039 ひでお 「こんなことそこのキミにしか言えないんだ!頼む!」
040 ささお 「そこのキミってなんださっきから!いま会ったばっかの他人か俺らは!よそよそしい!」
041 ひでお 「とにかく俺に消防士の気分を味わわせてくれ!頼む!一生でこのお願いは一度だけだから!」
042 ささお 「なんだそのセリフ!そこは『一生のお願いだから』でいいだろ!
っていうか一生でこのお願いは一度だけって意味変わってるし!
他のお願いは今後もバンバンするんじゃねぇか!」
043 ひでお 「頼む!この通り!」
044 ささお 「いやどの通りだ!手足をクロスされても!・・・あーもう、わかったよ。お前がそこまで言うなら、やるよ」
045 ひでお 「本当か!?」
046 ささお 「ああ」
047 ひでお 「ありがとう!地味に感謝するよ!」
048 ささお 「盛大にしろ盛大に。それで、俺はどうしたらいいの?」
049 ひでお 「えーっとそうだな。じゃあお前はまず、コンビニから自宅に帰ってきて」
050 ささお 「おう」
051 ひでお 「で、家の約50メートル手前で、家の前に集まってる30人ぐらいの人だかりにふと気が付く」
052 ささお 「50メートルぐらい手前で、おう。それで?」
053 ひでお 「それで慌ててコンビニの袋を利き手に持ち替えて、100メートル18秒の足で50メートルを走ってきて、
全力疾走をしたから軽く息を荒くしながら、人だかりの外周の人間からみて半径5メートル以内まで来て」
054 ささお 「設定が細かい!」
055 ひでお 「え?」
056 ささお 「無駄な詳細設定多すぎるだろ!なんだよ100メートル18秒の足って。
そんな具体例出されても、100メートル18秒の走力の走り方とか知らねぇから!
だからつまり、帰ってきたら自分の家の前の人だかりに気が付いて、
慌てて走ってきたら自宅が燃えてたっていうことだろ?」
057 ひでお 「そう、そういうこと。で、すでに消火活動は始まってる」
058 ささお 「なるほど、もうお前は火災現場にいるってことね」
059 ひでお 「そう!」
060 ささお 「おっけーわかった。じゃあさっそくやろうか」
061 ひでお 「あ、まだ待って」
062 ささお 「まだあるのかよ」
063 ひでお 「あとお前には5歳の息子がいる」
064 ささお 「は?・・・ああ、そういう事ね。おーけーおーけー。大体わかったからいいよ。やろう」
065 ひでお 「大丈夫?そんなすぐいける?」
066 ささお 「大丈夫大丈夫。いけるいける」
067 ひでお 「わかった。それじゃあ・・・はいスタート!」
068 ささお 「・・・なんか消防車の音すげぇな。近くで火事起きてんのかな。
ご近所さんが火事とかだったら嫌だなぁ・・・・・・
あれ?なんだあの人だかり。あそこって俺の家の・・・・・・
嘘だろまさか!おいちょっと待てよ!俺ん家が火事じゃねぇかよ!」
069 ひでお 「ちょっとあなた!危ないですから、下がってください!」
070 ささお 「あ、消防士さん!ここ俺の家なんです!」
071 ひでお 「この家の方ですか!」
072 ささお 「嘘でしょうこんな、ウチが火事だなんてそんな!」
073 ひでお 「落ち着いて!落ち着いてください!
現在我々が懸命な消火活動を行っていますので、
心境はお察ししますが、今は消火が終わるまでここで待っていてください」
074 ささお 「・・・そうだ。息子は・・・息子は無事ですか!?」
075 ひでお 「息子さんですか」
076 ささお 「はい!5歳の息子なんですけど、息子がリビングで寝てたから、
ちょっとだけコンビニ行こうって一人で出てきたんです!
息子は無事なんですか!?」
077 ひでお 「安心してください。ちゃんとうるさくないように、配慮しながら消火していますので」
078 ささお 「いや待て待て!うるさくないようにっておかしいだろ!
そんな場合じゃないんだよ!火事だから!生きるか死ぬかの瀬戸際だから!救って!息子を!」
079 ひでお 「大丈夫です!安心してください!」
080 ささお 「安心なんかしてられません!息子を助けてください!」
081 ひでお 「ちゃんと風邪をひかないようにタオルケットをかけておきましたから」
082 ささお 「かけておきましたじゃねぇよ!
そんな健康に対する心配はしてねぇんだよ!
燃えてるから!直に身の危険が迫ってるから!
つーかそれだったら一回息子のとこまで行ってんじゃねぇかよ!
その時に助け出してくれよ!そういうのいいから。真面目にやって!」
083 ひでお 「わかったすまんすまん。ええ!5歳の息子さんが!?」
084 ささお 「はい!一階のリビングにいるはずなんです!助けてください!」
085 ひでお 「一階にリビングがあるんですね!リビングは玄関から見て、どの位置ですか!?」
086 ささお 「玄関入って、廊下の突き当りの扉がリビングです!」
087 ひでお 「廊下の突き当りですね!廊下の途中に風呂場やトイレはありますか!?」
088 ささお 「はい!両方あります!」
089 ひでお 「廊下の右手側がお風呂で、左手がトイレですか!?」
090 ささお 「はい!その通りです!」
091 ひでお 「ウチの間取りと同じじゃないですかー!ちなみにトイレの手前の」
092 ささお 「知るかあああ!いいからさっさと行けえええええ!
お前の家の間取りなんか知らんよ!どうでもいい!
そんな場合じゃないっしょ!?燃えてるから、家!燃え盛ってるから!
間取りなんかどうでもいいから息子を救って!」
093 ひでお 「ちなみにだけど」
094 ささお 「なによ!!」
095 ひでお 「トイレの手前の、右手側に階段がある?」
096 ささお 「だから・・・間取りはもうどうでもいいって!!
そもそもこれ架空の自宅だから!実際住んでるのは小さいアパートじゃボケ!」
097 ひでお 「アパートなん!?」
098 ささお 「アパートじゃ!現実の家は!」
099 ひでお 「・・・えー、なんだよ期待したのにさー」
100 ささお 「・・・はあ!?何が!?」
101 ひでお 「いや同じ間取りなのかと期待させるから」
102 ささお 「なんの期待なんだよ一体それは!家の間取りが一緒でテンション上がるって聞いたことねぇよ!
もう、いいから消防士をやれよ!そんで早く息子を救ってくれ!
いや救ってくれっていうか、救え!早く!・・・一階のリビングに息子がいるんです!早く助けてください!」
103 ひでお 「あ、待って。あのさ」
104 ささお 「な・ん・だ・よ!いちいち!アパートの方だったら廊下はねぇからな!」
105 ひでお 「いや息子さ、一階のリビングにいるって言ったじゃん?」
106 ささお 「おお、言ったよ」
107 ひでお 「それさ、二階で寝てることにしよう」
108 ささお 「二階でって・・・なんで?」
109 ひでお 「息子は二階にいて、そんで途中で二階の窓から助けを求めてくるのよ」
110 ささお 「ああ、なるほどね。それを見たお前が果敢に火に飛び込んで行って」
111 ひでお 「周りの客よりも早く出てなるものかと無言で耐える」
112 ささお 「サウナじゃねぇかよそれじゃ!サウナじゃないから!家だから!そんでどんなサウナだよ!
火が燃え盛ってて息子が窓から助けを求めるって!もうふざけてないで、息子は二階にいる。
その設定でいいから、早く続きやろう」
113 ひでお 「ごめんごめん、やろうか。
じゃあいくぞ・・・お願いします!息子は二階にいるはずなんです!早く助けてください!」
114 ささお 「違う違う。ストップストップ」
115 ひでお 「なに?」
116 ささお 「逆でしょ?なんで急にお前が被害者側になったんだよ」
117 ひでお 「あ、そっか。ごめん、間違えた」
118 ささお 「間違えるなよ。お前消防士になりたいんだろ?」
119 ひでお 「そうそう、そうだった」
120 ささお 「俺は今わざわざ、消防士になりたかったお前に付き合って、こんなことしてるんだからな?」
121 ひでお 「ソーリーソーリー」
122 ささお 「ったくちゃんとやれよマジで・・・二階に息子がいるんです!助けてください!」
123 ひでお 「お子さんが!?分かりました。しかしまだ火の手が強いな・・・突入するのは厳しいか」
124 ささお 「あ、つとむ!消防士さん!二階の窓のところにつとむが!」
125 ひでお 「本当だ!つとむ君大丈夫か!?いま助けに行くから、
できるだけ他のお客さんよりも長くそこにいるんだよ!」
126 ささお 「だからサウナじゃねぇかそれじゃあ!!なんだお前!
真面目にやる気ないのか!お前が消防士をやりたいって言ったんだろ!?」
127 ひでお 「ごめん、実は俺お前に一つ謝らないといけないことがあるんだ」
128 ささお 「いっぱいあるけどなんだよ!」
129 ひでお 「途中で気付いたんだけど、俺がなりたかったのは消防士じゃなくて、
どうやら消防士のネタをする漫才師だったみたいなんだ」
130 ささお 「いやピンポイントだなぁ!だったら初めからそう言ってくれよ!真面目にやってた俺がバカじゃねぇかよ!」
131 ひでお 「初めからそう言うべきだったのかもしれないけど、俺は途中でそれに気が付いたから仕方ない」
132 ささお 「まあ途中で気付いたならな。仕方ないかもしれないな。って許せるか!やめさせてもらうわ」
133 ひでお 「そんなこと言わずに、人助けだと思って付き合ってくれよー」
134 ささお 「いま完全に終了のポイントだっただろ!俺が綺麗に漫才の終わりに繋げたのに無下にするなよ!」
135 ひでお 「あ、今の漫才の終わりだったの?」
136 ささお 「気付よ!『やめさせてもらうわ』って漫才の終わりの時に言うセリフだろ!」
137 ひでお 「そうなのか」
138 ささお 「当たり前だろ!」
139 ひでお 「それが世間では当たり前なのかもしれないけど、俺は今それを知ったわけだから仕方ない」
140 ささお 「まぁいま知ったなら、ってもうええわ!!」
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