おじいさんの恩返し

原作者 きなもち
登場キャラ数 男:1 女:1 無:0
ジャンル ギャグ
セリフ数 102
目安時間 13分
利用規約 配布元とURL書いてってことです
提供元 音楽作品を制作している1次創作グループ
メディア  
登場人物 性別/声 セリフ数 その他
おじいさん
50 雪道でトラバサミに引っかかってしまったおじいさん
女性
(じょせい)
52  

サークル情報

001 おじいさん 「すいません!
そこの道行くお方!どうか腕が引きちぎれる前にこの哀れな老人めを助けては頂けないでしょうか!」
002 女性 「あ、えっと・・・すいません、まったく状況が掴めないのですが・・・なにをなさっているのですか?」
003 おじいさん 「すいませぬ!お答えしますので、どうか助けては頂けないでしょうか!」
004 女性 「い、いいですけど・・・これを外せばいいんですか?」
005 おじいさん 「そ、そうです!その罠を外して・・・はぁー、ありがとうございます。助かりました」
006 女性 「いえ、それは構わないのですが、先ほどは、どういう状況だったのですか?」
007 おじいさん 「いやはやお恥ずかしい姿をお見せして申し訳ない。まさか人間の罠なんぞにかかってしまうとは」
008 女性 「や、やっぱり人間の罠にかかっていたんですか!?」
009 おじいさん 「トラバサミに引っかかっておりました」
010 女性 「まごうことなき生身の人類なのに!?」
011 おじいさん 「好奇心は猫をも殺すとはまさにこのことですな」
012 女性 「え、こ、好奇心で手を突っ込んだんですか!?」
013 おじいさん 「ええ、触ったらどうなるのだろうなんて、思いませぬか?」
014 女性 「そういうこと考える時たまーにありますけど、実行には移しませんよ!あくまで考えるだけですよ!」
015 おじいさん 「普段はそうなんですが、この雪景色に包まれた静寂のせいかついつい実行に移してしまったと言いますか」
016 女性 「は、はあ」
017 おじいさん 「本当に好奇心は猫をも殺すということですな。トラバサミだけに」
018 女性 「あの、さっきから薄々思っていたのですが・・・それ全然上手くないですよ」
019 おじいさん 「え?それ?それというのはどれのことですかな?」
020 女性 「その好奇心はっていう・・・」
021 おじいさん 「なにをおっしゃっているのかわたくしには皆目検討つきませぬ」
022 女性 「え、いやだから」
023 おじいさん 「なにはともあれ助けていただきありがとうございます。
今はなにも持っておらぬ故、お礼をすることはできませぬが、後日必ずお礼をさせていただきますので」
024 女性 「え!?そ、そんな!いいですよお礼なんて!大したことしてませんし!」
025 おじいさん 「それでは、わたくしの気が済みませぬ!後日必ずお礼に参ります。では、私はこれで。
本当にありがとうございました」
026 女性 「ちょ、ちょっと!・・・行っちゃった。お礼なんて本当にいいのに。
というかお礼に参るって、私の家の場所とか教えてないのにどうやってお礼しに来るつもりなんだろう・・・
まぁいっか。とりあえず帰ろ帰ろ」
027 女性 「・・・・・・はぁーよかったー、まさかいきなりこんな吹雪いてくるなんて・・・
もう少し早くに吹雪いてたら帰れなくなってたかもしれないし本当によかったぁ。
・・・うー、それはともかく火焚かなきゃ火」
028 おじいさん 「コンコンコン」
029 女性 「あ、えっと・・・はーい!どなたですかー?」
030 おじいさん 「コンコンコン」
031 女性 「ちょ、ちょっとお待ちくださいねー」
032 おじいさん 「コンコンコン」
033 女性 「わ、わかったから自分でコンコン言わずノックをしてください!はい、今開けまーす!」
034 おじいさん 「・・・いやはや、夜分お訪ねして申し訳ない」
035 女性 「あれ?あなたは・・・」
036 おじいさん 「この吹雪のせいで家に帰れなくなってしまいましてな、
申し訳ありませぬが少しばかり休ませていただけないでしょうか」
037 女性 「え・・・あ、え、あの」
038 おじいさん 「どうかなさいましたか?」
039 女性 「先ほどのおじいさん・・・ですよね?」
040 おじいさん 「なんの話でしょうか?」
041 女性 「先ほど私がお助けしたおじいさんですよね?」
042 おじいさん 「お嬢さん、どなたと勘違いしているのかは分かりませぬが、わたくしとあなたは初対面ですよ」
043 女性 「でも明らかに」
044 おじいさん 「人間この歳になると、みな似たような顔になりますからのう」
045 女性 「そ、そうですか・・・」
046 おじいさん 「それで、少しばかり休ませていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
047 女性 「それは構わないのですが・・・」
048 おじいさん 「ですが・・・?あー、なるほど。若い女性ですので、やはり心配ですよね。
しかし安心してください。所詮は老いぼれですから、とって食いやしませぬよ」
049 女性 「い、いえ!そんなこと思っていませんよ!
ただ私の家、狭いし、すきま風もあるし、今は散らかっててお客様を入れるにはいささか・・・」
050 おじいさん 「いえいえ、構いませぬよ。
この吹雪の中で帰ることもできず、ただぼんやりと待つよりは屋根があるだけでもありがたいことですから」
051 女性 「そ、そうですか?じゃあえっと、寒いのでどうぞ火の近くにお座りください」
052 おじいさん 「これはこれは、親切にありがとうございます」
053 女性 「吹雪の中歩いて疲れましたよね。いまお布団引きますから少し待っててください」
054 おじいさん 「おぉお嬢さんや、そんなに気を遣わなくてもいいのですよ。
わたくしが突然訪ねてきたのですし・・・それに吹雪が止めばすぐにでも帰りますから」
055 女性 「でもこの調子だと多分夜中・・・
もしかしたら朝方まで止みそうにもありませんよ?」
056 おじいさん 「でも本当にいいんですよ。
なんなら少し休ませていただいたら、すぐに帰りますから」
057 女性 「だ、ダメですよ!いくら何でも危険過ぎます!」
058 おじいさん 「これでも普段からここら辺の道は歩いているので大丈夫ですよ。
まぁ・・・こんな吹雪の中は流石に歩いたことはありませぬが」
059 女性 「全然大丈夫じゃないですよ!
ダメですよそんなの!死んじゃいますよ!?」
060 おじいさん 「しかし・・・」
061 女性 「この吹雪の中ご老人を追い出したら、
それこそバチが当たってしまいますよ!
私は構いませんからどうぞお泊まりになってください!」
062 おじいさん 「そ、そうですか・・・ そこまでおっしゃるならば
お言葉に甘えて泊まろうとは思いますが、
しかしただで泊まるというのも・・・」
063 女性 「いいですってばそんな」
064 おじいさん 「いえいえ、そうはいきませぬ!
そればっかりは私の良心が咎めます。
なにかお礼をしなければ気が済みませぬ」
065 女性 「でも・・・」
066 おじいさん 「おや、そちらの部屋には機織り機がありますね」
067 女性 「あ、はい。私の仕事道具なんです」
068 おじいさん 「あの機織り機、今晩使うご予定はあるのですか?」
069 女性 「いえ、明日になったらまた使いますが今日はもう使いませんよ」
070 おじいさん 「ではお嬢さん、
お礼をするためにあの機織り機をしばしお借りしたいのですが」
071 女性 「機織り機をですか?」
072 おじいさん 「安心してください。よもや壊したりなぞ致しませんので」
073 女性 「お貸しするのは構いませんが、なにを織るのですか?」
074 おじいさん 「それは、そうですね・・・
できてからのお楽しみというのはどうでしょう」
075 女性 「あ、はい・・・」
076 おじいさん 「ではお嬢さん、数時間ほど織物をさせていただきますので、
しばらくこの部屋を覗かないようにしてください」
077 女性 「わ、わかりました・・・」
078 おじいさん 「・・・・・・・・・
うお、お、おぉぉおおぉおおおぉぉぉぉおおおおお!!」
079 女性 「え、え!?どどどどうなさったんですか!?」
080 おじいさん 「フー・・・フー・・・う、ど、どうかお気になさらずに・・・」
081 女性 「お気になさらずにと言われましても・・・」
082 おじいさん 「何でもありませぬので、大丈夫です。大丈夫」
083 女性 「そ、そうですか・・・」
084 おじいさん 「・・・・・・
うおおおおおぉぉぉぉぉおぉおおぉおおおおお!!」
085 女性 「ちょちょちょ!本当にどうしたんですか!?」
086 おじいさん 「大丈夫ですからお気になさら・・・
ぉぉおおおあがあああああああああああ!!」
087 女性 「いやでも」
088 おじいさん 「フー・・・しばし、しばしお待ちください・・・」
089 女性 「・・・元はと言えば私の仕事道具だし、
私の家なわけだし、少しくらい見ても問題はないよね。
そーっと・・・」
090 おじいさん 「ふっ、ふっ、はっ!りゃっぱあああああああああ!!」
091 女性 「な、な、なにをしてるんですかあああああ!!」
092 おじいさん 「はー・・・はー・・・覗かないように、と言ったのに・・・
見てしまわれたのですね・・・騙していて申し訳ありません。
そうです、わたくしはあの時助けていただいたおじいさんです」
093 女性 「それについては始めから存じ上げておりました!」
094 おじいさん 「あの時のお礼をするために
こうして別のおじいさんのフリをしてあなたの家に参り」
095 女性 「堂々とあの時のまんまの格好で突入しておいてフリもなにも!!」
096 おじいさん 「こうして自分の皮膚を織っていたのです」
097 女性 「その発想については、もう理解の許容範囲を
明らかに超越している!」
098 おじいさん 「すでに見られてしまい
お礼の品がなにか分かってしまいましたが、
まぁ完成品を楽しみにしとってください」
099 女性 「製造過程も完成品も見たくありません!」
100 おじいさん 「それと作業時の声はうるさいし
機織り機は血みどろですがお気になさらずに」
101 女性 「私の機織り機がああああああああああ!!!」
102 女性 「その後、おじいさんは私に完成品の皮膚織物を
渡して布団に入り吹雪が止むのを待ち
『吹雪が止みましたね。それではこれでお別れです』
と言って空高く飛び立って行ったのは言うまでもない・・・」
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